神宿る神聖な場所
神との対話の場。人々の心の拠り所。
神を祀り、災厄から護って貰う為の場所。
そして、そこは魔を封じる場所でもある。
人里離れた山奥にそれはあった。
神社だ。
決して忘れ去られた神社ではない。
しっかりと手入れをされ、侵しがたい神聖な雰囲気を宿している。
鳥居の側には封魔神社と彫られた石柱がある。
強風が吹き荒び、木々は悲鳴を上げる。
幾重にも雲が重なり合い、稲光を発している。
別に台風が来ているわけじゃない。
「不吉じゃ!」
老婆だ。
お前が元凶なんじゃねぇのか?と勘繰りたくなるような妖しげな老婆だ。
灯された蝋燭がその妖しさを演出している。
「不吉じゃ!!」
再び、声が発せられた瞬間、稲光と共に轟音が鳴り響いた。
どこかに落ちたのかも知れない。
障子が大きな音を立てる。風が強くなってきた。じきに雨が降り出すだろう。
「はい。ババ様」
老婆の正面には十代半ばと思われる少女が正座していた。
白い装束を纏い、真剣な表情をしている。
蝋燭の灯が少女の気持ちを更に引き締めていた。
「見よ」
老婆は檜の箱に納められた鏡を少女の前に出した。
何の飾り気の無い鏡。
その鏡は黒い光としか形容出来ない光を淡いながらも放っていた。
暗がりだからって、こんな光を放つはずはない。
「御神体である封魔鏡が『魔』の力を感じておる」
「はい」
「この地を守護する勇者と共に『魔』の者達を封じるのじゃ」
「はい!」
「辛い戦いになるはずじゃ。挫けず勇者と共に戦うのじゃぞ」
「はい。ババ様」
少女は再び、身を引き締め、己に課された使命の大きさを感じていた。
老婆は少女の手を取り、何度も名残惜しそうに手をさすった。
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